はじめに
孫子の兵法が読まれる理由は、人間が生きていくに避けられない戦いの基本原則を説き、いかなる時代であっても応用できるという面白さがあるからだ。そこで孫子の兵法から基本原則を抜き出して応用すれば「知財戦略」の答えが見えてくるのではなかろうかと考えている。
兵法や戦略は戦いのノウハウである。基本的には理詰めであり論理的になっている。論理的である条件の一つに前提条件が同じであれば推論の結果、答えは同じとなる。つまり、共通する前提条件で物事を考えれば出てくる答えは同じである。戦略とは共通する前提を合わせるといった抽象的なものである。だからこそ自分の頭で考え、独自の答えを出していく応用力が求められる。
知財経営で会社の持続的発展を目指す
「知財管理」から「知財経営」への転換は知財関係者にとって最大の関心ごとである。「知財経営」の基本は社内にある知的資産を会社経営に取り入れて会社の持続的発展をめざすことである。つまり、知的財産のマネジメント法である。
しかし現状は企業経営と乖離した「知財管理」の体制を続けることで知的財産が持つ本来の機能(役割)が見失われている。それは、特許出願件数と会社の業績が関係なかったことで充分に証明されている。
「知財経営」を実践するには、まず社内にある知的資産を顕在化させる必要がある。暗黙知と言われている知的資産を顕在化する手段の一つが文書化である。しかし目に見えない「無体資産」を文書化し、知的財産に仕立て、それを、会社経営に取り入れる「知財マネジメント法」は日本には存在していない。