26.知財戦争とは言語の戦いでもある

知財戦争とは言語の戦いでもある

孫子いわく“用を国に取り,糧を敵に因る”

兵器は国内から持っていく、食料は敵国からとる。現地で手に入れられるものは現地で手に入れる、荷物がいらず異動がしやすい、と孫子は説いている。

「知財戦略」は理念や方向性を示すものである。法律の解釈や特許明細書の書き方は戦術である。特許の世界で最も重要な武器が特許明細書である。「知財係争」となれば特許明細書に書かれている文章が全てであり、図面は補助でしかない。特許明細書で記述されていない文章をいくら図面や思い入れで反論しても無駄である。記述されている「文章が全て」これがグローバル社会でのルールである。「IP戦争」とは,詰まるところ言語の戦いである。

出来るのに出来ない振りをして相手の懐に入る

孫子いわく“能くして、これに能くせざるを示し、用いて、これに用いざるを示す”

できるのにできない不利をする。用いているのに用いない不利をする。うまくごまかして敵の懐に入る。本心を敵に知られないようにする事が大事である、と孫子は説いている。

日本の社会は霞ヶ関を頂点にして、大きい組織、あるいは大きな会社ほど「エライ」と言う考えが蔓延っている。つまり相手が小さい会社であれば能力が低いとみる。だから小さな会社が開発した技術は信用しない。自前主義というだけが理由ではない。他の理由として、小さな会社と付き合って、若し失敗したときの責任を取らされたらたまらないという用心深さ、保身がある。

信用が得難い小さな会社は「自社情報」を積極的に発信させて自社の存在を知らせなければならない。会社は小さいが確かな技術を持っており真面目な経営ぶりが分かれば大手企業のビジネスパーソンも声が掛けやすくなる。そして彼らと会える機会ができたなら、小さい会社ながら「手強い」実力ある会社であることを認識させることが大事である。