9.特許明細書は、事業計画書でもあり契約書でもある

特許明細書は、事業計画書でもあり契約書でもある

欧米では当たり前のライセンス事業が、日本の大学、公的研究機関、企業でも根付かないのは、特許明細書の品質に重きを置かない「日本特許村」の風土が邪魔をしている。その発明技術を使えば自社の商品開発が速く進む、あるいは新規ビジネスが可能であるというヒントが得られ、さらに権利の範囲がどの範囲まで認められているのかを読み手側に納得させねばならない。

そのためには特許明細書の記述は明快で分かりやすく、そして強固な権利になっていることが最低の条件である。この至極当たり前のことをやっていれば、ビジネスチヤンスは限りなく世界へ広がる。特許明細書とは事業計画書でもあり契約書でもある、といわれる所以はここにある。

 グローバル知財で日本が抱える問題

欧米知財のグローバル化で国内の特許出願は減り続ける。一方PCTを利用した国際出願は増える傾向にある。当然ながら出願指定国も増える。

基本的には世界の共通語である英語(日本語→英語)へ翻訳して現地事務所の代理人へ依頼することになる。しかし、その英訳が問題となっている。つまり難解な日本特許明細書から英訳することが難しいことである。翻訳者は仕方なく日本語から忠実に翻訳するが、その英語は日本的と云うか変則的(*)な英文になる。

この変則的な英文から自国語へ翻訳できる現地代理人は極めて少ない。彼らは確かに英語の達人ではあるが、オープンな英語であれば、という条件がつく。即ち文明に根ざした開かれたオープンな英語へ翻訳できる日本特許明細書語でなければ問題の本質は解決しない。日本企業が外国へ出願している「特許明細書」の品質は特許審査以前の問題であり惨たんたる状態にある。世界で戦えるの武器となるグローバル特許明細書の改善が最大の課題である。

(*)ジャパニッシュあるいはジャパングルシュといって外国の特許関係者を大いに悩ませているらしい。