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67号事業形態と特許の基本コンセプト

今までの特許の有効利用についての論議は、完成品メーカーも部品メーカーも一緒くたにしたものが多すぎた。これからは、我が社の特徴を前提にして、特許の活用法を考えなければならない。

世の中にいろいろな事業がたくさんあるけれど、それを大きく分ければ、
『見込み形態の事業』と『受注形態の事業』の2種類しかない。
見込み形態の事業とは: 売れるか売れないかわからない商品を、値段も数量も自分で決めて販売する事業形態をいう。

特許マンが知らなければならない事業形態の特徴
見込み形態の事業受注形態の事業
お   客   様不特定多数特定少数
商品の差別化要素 商品そのもの
  • 商品の機能
  • 商品の独創性
  • 商品のイメージ
顧客に対する信用
  • 品質・納期・数量の安定性
  • 技術力・企画提案力の優秀性
成長拡大要因
  • 1.新商品
  • 2.販売ネットの構築
  • 1.新規得意先の獲得
  • 2.絶対的な技術力
安定化要因 売れ筋の定番商品をたくさんもっているかどうか 技術力・信用力をどのくらい蓄積しているか

見込み形態の事業における特許の基本コンセプト

  1. 1.差別化領域を囲む塀をしっかりと築くこと
  2. 2.市場に侵害品が出たとき、それを積極的に排除すること
  • 見込み形態の事業では、商品の機能・独創性・イメージが差別化要素になる。しかし、これらのものは、侵害品が出れば、すぐ差別化要素ではなくなる。
  • また、ユーザーは、侵害品を買うことについて、罪の意識がほとんどない。しかも、ユーザーを、特許権侵害で訴えることは、現実的には、先ず無理である。
  • したがって、侵害品は、製造販売の中止ということで、それを市場から排除するということに全力を尽くさなければならない。
  • 侵害品の発生を未然に防止するためにも、差別化領域に高くて丈夫な塀を作らなければならない。
  • 我が社の売れ筋商品について、侵害品が出てこないときは、特許権による塀が機能していると考えるべきである。
    したがってこのときには、その周辺の特許を考慮すべきである。
  • 売れ筋商品に関しては、特許部門から営業に対して、我が社にどのような権利があるのかを、常時知られるようにしなければならない。
  • 営業は、市場に侵害品が出回ったら、即座に特許部門に知らせるという態勢を整えること。

受注形態の事業における特許の基本コンセプト

  1. 1.信用力を維持する手段とする
  2. 2.お客様に、我が社の技術を盗用させない手段とする
  3. 3.お客様との力関係を逆転するための手段とする
  • 次のような基本方針を、明確にすべきである。
    我が社は、お客様に提案する新しい商品を、必ず特許でガードする。特許でガードできない新商品は、原則としてお客様に提供しない。
  • 特許でガードせずにお客様に新商品を提案したときには、その部門の担当長が責任を負うものとする。
  • お客様には、我が社の新商品が特許でガードされていることを意識してもらうように、最善の努力をする。そのために、営業と特許部門との連携を密にする。
  • ささやき戦術の活用
    お客様に対して、「この新商品は、特許の人たちが、大変に苦労して特許を取ったものなんです。」というように、世間話でもよいから、必ずささやくようにする。
  • 特許の蓄積は、我が社の技術力を誇示したり、技術的な信用を維持したりする手段とすべきことを、社内に徹底する。
  • いずれにしても、受注形態の事業の場合には、お客様が我が社の特許権を認めてくれなければ、特許権の持つ優位性が減殺されてしまう。この点が、見込み形態の事業と大きく異なるところである。
  • しかし、受注形態の事業を営みながら、お客様に我が社の特許権を認めさせることなど、とうてい無理だ、などと平気で言う人がいる。
  • とんでもない話である。認めてみらうためにどうしたらいいかを工夫しなければ、特許を取る意味も半減してしまう。特許にたくさんのお金を払っていることを忘れてはならない。