14.戦いとは所詮、騙しあいである

戦いとは所詮、騙しあいである

孫子いわく“兵は危道なり”

戦いとは所詮、騙しあいである。騙すということは下品行な人間がやる卑劣な行為で抵抗感を抱く人も多い。しかし生きるか死ぬかの命を掛けた危険な戦争であれば相手を油断させて、騙すことも、一つの戦略であろう。むしろ騙された方が悪いと言う論理になる。知的財産の世界では、戦わないための「知恵較べ」と捉えた方が正しい。

特許の世界でも騙し合いはあるようだ。たとえ騙すつもりは無くても結果的に騙すことになるケースが生じる。中小企業が苦労して独自に開発をした「部品・部材」を売り込めば相手との共同出願が条件になることがある。更に「部品・部材」の研究が進めば特許出願費用はうちで持ちますから“どんどん研究を進めてください”ということもありうる。そのうち市場が大きくなればコストダウン、安定供給という理由で自社の子会社へ製造させるという最悪のシナリオもある。

相手の動きを知り、自分の動きは分からせない

孫子いわく“人を形せしめて秘密形なければ、則ち我は専にして敵はわかる”

最上の情報戦略は、こちらから敵の動きは手に取るようにわかるが敵はこちらの動きが分からないという状況を生み出すことである。これが「情報戦」における最上の「情報戦略」である。即ち情報の格差が勝負の分け目となる。

社内にはいろんな知的財産が埋もれている。多くは個人の頭の中に記憶されたままである。特に技術者にその傾向が強い。技術者の研究成果は、特許を出願して顕在化(開示)させるのが手っ取り早い。しかし特許を出願すれば約1年6ヶ月後には世界で早期公開されるリスクがある。他方、ノウハウ技術やプロセス技術等は「ブラックボックス技術」として特許を出願せずに社内で秘匿しながら運用することが大事である。即ち特許出願に頼らない「知財戦略」も一つの選択肢である。