20.賢者は利益と損失を知る

孫子いわく“智者の慮は必ず利害に雑う。利に雑えて、しかして務め信ぶべきなり。害に雑えて、しかして患い解くべきなり”

1.孫子いわく、賢い物は必ず利益と損失の両面からものごとを考える。即ち利益を考えるときは損失の面も考慮に入れる。そうすれば物事はうまくいく、逆に損を蒙るときはそれによって受ける利益を考えるようにすれば無用な心配はいらない。

ライセンス契約、共同研究開発契約などに於いては、自社の良い面と悪い面を明確にし、身の丈を知ることが大事である。強い企業は弱い企業にライセンスを認めてもかまわない。何故なら強い企業は市場で勝っているからだ。弱い企業と技術的に同等になってもなんら影響は無い。むしろライセンス収入が見込め不利なことは何も無い。弱い企業はライセンス料を払うことで高コスト体質となる。強い企業は弱い企業の販売チャンネルを利用して「研究開発投資」の回収を急ぐのも一つの手である。

2.逆に弱い企業から強い企業へのライセンスは止めた方がよい。特許でせっかく差別化したのに差別化が無くなれば強い企業に飲み込まれるだけである。強い企業が欲しがる技術が、将来にわたって自社の商圏で競合しないという保証があれば話は別である。

結論から言えば特許権の共有は弱い企業には不利である。強い企業が欲しがる技術であれば、強い企業のスキを見つけてニッチ市場を狙った商品開発に勤しんだ方が賢明である。では「力」が同等の企業同士であればどうするか。市場が既に「成熟・衰退期」を迎えていればクロスライセンスする。クロスライセンスは市場、あるいわ商品を「同質化」して効率よく市場を分け合うことで「共存・共栄」するのが目的である。

*)「独立型企業」と「系列型企業」とでは事情は異なると思うが、ここでは「独立型企業」を想定する。