22.近づきながら遠のく、遠のきながら近づく

孫子いわく“近くして、これに遠ざかるを示し、遠くして、これに近づくを示す”

1. 近づいていながら遠のいているように見せる。遠のきながら近づいているように見せる。特許の優劣は発明技術の比較から始まる。課題が同じでも解決方法は他人と自分は違う。山登りという目標は同じであっても全ての人が同じ道から登るとは限らない。発明技術の本質は一つではない。視点を変えてみることで幾つも考えられる。開発技術者に求められるのは柔軟な発想と創造力である。

発明の本質は、様々な検証を加えることで広くにも狭くもなる。例えばA細胞へ「ある物質」を「ある手法」でストレスを加えたらB細胞が生成できたとする。発明者は「ある物質」の存在よりも「ある手法」が発明と捉えた。なぜなら「ある物質」だけではダメで「ある手法」でストレスを掛けなければB細胞は生成されないからだ。その結果「ある手法」の発明技術を特許請求範囲として特許出願したと、仮定する。

2. 「ある物質」の権利主張がされていなければ、「ある物質」は既に知られている(公知)技術であると見なせる。であれば発明の範囲は「ある手法」の発明技術に限定され狭くなる。特許公報でこの発明を知った他社は、より最適な「ある手法」を研究してくるであろう。

「ある物質」が世に知られていない(未知)技術であれば、発明の権利範囲に入れておくべきである。「ある物質」が特許になれば、他社は他の物質を探さねば成らない。権利範囲は格段と広くなり開発は難しくなることは明らかである。

また立場を変えてみるだけでも、いろんな発想が生まれる。他社の特許が障害になったとする。この特許を参考にして権利侵害しない技術開発が自分にできるのか、また逆に他社の技術者であれば自分ならどうするか、「半分冗談、半分本気」で言えば、人間が一番の特許で個人個人がかけがえの無い余人の真似ができないものである。