第2章:もし自分が、知財の部長 だったら、どうする?

Ⅰ、「知財経営」が実践できる「知財部」にする

「知的財産経営」とは、財務諸表の数字に表れない各企業に潜在する隠れた強み(知的財産)を評価し、これを積極的に企業経営やビジネスに練りこんで活用する「企業経営・経営手法」である。要するに「知的財産経営」とは、知的財産を戦略的に活用して経営課題(利益を出して持続的に発展すること)を達成することである。

企業経営の基本的理念は、持続的発展であり、企業が持続的発展を確保するためには、自社の強みを維持・強化し、他社との差別化を図り、それを自社の重要な「経営資源・競争軸」と位置づけて対応することが必要不可欠なことである。そして、自社の強みを維持・強化し、差別化を可能にする最も重要な要素が「知的財産・知的財産権」である。即ち、知的財産を経営資源・競争軸と位置づけて対応する企業経営が「知的財産経営」である。

知的財産制度は、経済、文化発展政策として、創作に対し政策的に排他権を認知し、創作者に経済的インセンティブ(Incentive)、モティベーション(Motivation) を与えるものである。これからの企業経営においては、知的財産保護制度に沿って、取得、保有する知的財産を、適正に評価し、適法かつ、公正に企業戦略に練り込んでいく必要がある。そして、知的財産経営においては、知的財産、知的財産人材、 知的財産戦略の三位一体の経営が必要不可欠である。

知的財産戦略は、知的財産問題だけで判断、決定できるものではなく、経営問題、 経営判断の一部に帰結するので、戦略的知的財産人材は知的財産を中心として、経営、組織能力を必要とする。知的財産経営において特に重要なことは、知的財産の本質的機能を整理把握し、その役割を適切に認識し、知的財産戦略の諸施策を総合 政策的思考で実施することが肝要である。

(引用:青山学院大学法学部特別召喚教授 石田正泰)