あとがき

私は、篠原先輩から、これまで預かってきた膨大な書き物」を読み返しながら「文化と言語」について勉強を続けているが、ひと区切りつけて自分なりに整理し、編集をして纏めたのがこの資料である。

プロの編集者に委ねれば、リッパな「書き物」に仕上がると思う。しかし私にはその能力がない。私にできることは、篠原先輩の書き物を残すことである。篠原先輩の考え方、生き方はすごいと思う。先輩に対する尊敬の念は、ますます強くなっていく。

私ごときが「あとがき」を書くことは荷が重い。ここは篠原先輩が尊敬してきた鈴木孝夫先生(2021年没)の書籍「日本人はなぜ英語ができないのか」に書かれていることを引用させてもらった。篠原先輩の口癖は、鈴木孝夫先生は、こんなことをおっしゃているという尊敬の言葉ばかりであった。

日本人はなぜ英語ができないのか 岩波新書622 鈴木孝夫著作
1999年7月19日第一刷発行 2021年3月8日 第21刷発行

『インドやフィリピンの人々がそもそも英語を学ぶようになったのは、一口で言えばイギリスやアメリカといった宗主国の人間が、彼らを統治し搾取する際に、自分たちの意思が相手に伝わらなくては困るから、彼らに英語を学ばせたためです。要するにそ宗主国の一方的な都合で英語を教えたのであって、支配される側の自発から出た学習ではありません』p100

『アメリカと違うことを忘れるな、日本が米国政府から次々と突きつけられる、やれ「構造改革」だ「グローバル・スタンダード」だといった要求に従って、日本を彼らの望む彼らと同質の社会に、しかも私たちの経済的負担と心理的葛藤という代償を払って、どんどん改造していけば、日本はやがて「小さな」アメリカになるのが落ちです。しかもこのことは、日本が日本らしさ、日本の良さをどんどん捨てることを意味するのです。私は一人の日本人として、日本の文化文明にはほかの国には見られない素晴らしい点、美しいところがたくさんあって、それは世界全体の文化文明の進歩発展に大きく寄与できると確信していますから、日本のあまりのアメリカ化には賛成できません』。158P

『日本はいま、まさに国際的な生き残りをかけて、英語を使って発信しなければならない立場にあるのですから、英米人の英語だけが正しい英語だという、旧来の狭い考え方から一日も早く脱却して日本式英語をむしろ意識的積極的に生み出す努力をしなければならない立場に立たされているのです』。P173

『日本の大学における外国語教育は、明治このかた、基本的には西洋の文化文明を、それとはまったく無関係に発達してきた日本という異質の国に取り入れ日本の国全体を可能な限り西洋化するという、それまで世界に類を見ない、じつに大胆な文明のパラダイム変換という国家目標に向かって、すすめられてきたものです。しかし・・(以下略)』。P129

「余談」:引退をしてからは、自宅のノートパソコンで資料整理をしている。自分のパソコンを持ったのは初めてである。これまで会社で使っていたパソコンとは使いかってが違うので、戸惑うことが多く恐々と付き合っている。これまでは、分からない事があれば周りの人が助けてくれた。操作を誤ってトラブルになれば管理者が解決してくれた。

今は自分で解決するしかない。しかしパソコンについて詳しくないので対処することができないでいる。時折、パソコン画面に見たことがない「お知らせ情報(警告?)」が届くが,どうしてよいのか分からずストレスとなる。“怪しいお知らせは、注意しないと大変なことになる”、という話は聞いている。しかし、どんなお知らせが「安全なのか、ヤバイのか」の判断ができない。

とりあえず無視して誘導に入り込まずパスしているが果たして正しい選択であるか不安である。ネットで調べてもよくわからない。画面に入って来た「お知らせ情報」を写真に撮り、メモでも書き留めて週末にある人に見てもらうことにしている。その結果「パスでOK」であることで安心している。また、どのような性質のメッセージなのかも教えてくれるので勉強にもなる。それにしても面倒である。

余談はさておき、今回のレポートの主題は、近代文明を受け入れながらも、日本人としてのアイデンティティを失わず国際社会で生き抜ける日本、日本人になろう、というたわいの無い能書きである。私の楽しみの一つにNHKテレビで、毎週放送されている「プロジエクトX」を観ることである。そこには“どんな難題であってもやり遂げるまで、諦めの悪い技術者達、あるいはリーダ達の物語である。(矢間伸次2024/06/06)