2、ヨーロッパの誕生とヨーロッパ文明の特性

書籍:『超約 ヨーロッパの歴史』 増補版 著者: ジョン・ハースト

日本語版監修者:福井 憲彦 訳者:倉島 雅人:発行所:東京書籍株式会社
2019年4月25日 初版 第1刷発行 2019年12月24日 第5刷発行
2023年9月11日 増補版 第1刷発行

『この書籍は、古代ギリシャ、ローマの世界から現代のEUに至るまでの長期的なスパンを念頭に、ヨーロッパ文明の特徴とは何であったのか、またその地域社会は、どのような可能性や問題点を人類社会に投げかけてきたのか、という本書には、読者に知識を与えると同時に、考えさせる記述が満ちている』。(序文から引用) p5

著者のジョン・ハーストは、ラ・トローズ大学に40年近く所属し、教鞭をとっていたオーストラリア出身の歴史家で、執筆の動機は最近の学生たちはオーストラリアという自国の起源に関わっていたイギリスや、そのイギリスが位置していたヨーロパ世界の歴史について、あまり知らなさすぎるという著者の危機感にあったらしい、と書籍の序文で紹介されていた。

第一の要素、古代ギリシャとローマ

『哲学、芸術、文学、科学、医学、政治思想―、これらすべての知的行為はその起源へと辿ると古代ギリシャにたどり着く。ギリシャはその偉大なる栄光にあった時代、単一国家ではなかった。それは、現在の視点では都市国家とも呼ばれる小国家の集合体であった』。(原文引用)p15

『ギリシャ植民市は、現在のトルコ、北アフリカ沿岸地域、スペイン、南フランス、南イタリアなどに進出し、植民市を建設したが、イタリアにはローマ人が住んでいた。(略)やがてローマ人はギリシャ本土やそのすべての植民市をものみこむ巨大な帝国を打ち立てた』。(原文引用)p15

◆ローマ人が、“ギリシャ人は自分たちよりも優れている”ということを認識していたと、書籍に書かれていた。新しい発見であった。(矢間)

第二の要素 キリスト教

『ユダヤ人は、この世にはただひとつの神しかいない、と信じるようになった。こ れは、きわめて特殊な考え方である。ギリシャ人やローマ人の間では、この世は数多くの神が存在するというのがごく普通の考えだったからだ。さらにユダヤ人は驚くべき信仰を作り上げていた。それは唯一の神が特別にユダヤ人の面倒を見てくれる、なぜなら自分たちは神に選ばれた民だから、というのである』。(原文引用)p22

キリスト教の創始者キリストはユダヤ人であること知っていたが、なぜキリスト教が世界の宗教になったのか、よくわからないでいた。キリスト教がユダヤ人だけのものではなく、万民の物であることを明確に示したのはパウロであり、パウロの布教活動からキリスト教が世界宗教になった、という説には納得できた。(矢間)

第三の要素 ゲルマン人

『ヨーロッパという混合物を形成する第三の要素は、ローマ帝国に侵入したゲルマン戦士である。彼らは北の辺境に暮らしていたが、紀元5世紀には人口が爆発的に増加していた。476年ゲルマン人は、ローマ帝国の西方領土を滅ぼした。その主要地域は、現在のフランス、スペイン、イタリアにあたり、ヨーロパ文明という混合物の最初の姿が現れた』。(原文引用)p29

『西に向かったゲルマン族の一つだけが永続的な国家を作りあげた。それがフランク王国である。市の版図は現在のフランス全土とドイツ・スペイン・イタリアの一部まで及んだ。フランスという国名は、ゲルマン部族の一つ「フランク族に由来している」。原文引用 p97-98

『イングランドは、島の東部において外部からの侵入を二度経験した。最初はアングル人、サクソン人、ジユート人のゲルマン人、そしてノルマン人である。二つの侵入者はいずれもゲルマン系の言葉を話す人々だったため、このゲルマン語が今日の英語の期限となった。(中略)イングランドのノルマ人は独特のフランス語を話していたがこの一部がゲルマン語とミックスされて、のちの正式な英語を形成した』原文引用 p107-108