3.篠原ブログ:(1081)まずい食事と世界制覇との関係

もう40年ぐらい昔のことだったと思うが、イギリスの中年(あるいは初期高齢者?)のおじさんがたった一人、自分のヨットでどこの港にも寄らずに世界一周を果たしたことがある。(この人は後にその栄誉をたたえてエリザベス女王からサーの称号を与えられた。)このニューズに接してあるフランス人がコメントした。”俺達だってそれぐらいやろうとすればできる。(つまり、気力も技能もある。)しかし一人乗りのヨットに世界一周に要する日数分の食糧とワインを積み込んだら船が沈んでしまうぜ。だからやらない。”というものであった。

イギリス人のやることには箸の上げ下げまで難癖を付けるフランス人であるから、これぐらいの負け惜しみは珍しくないが、真理であるかも?。ワイン無しの食事、しかも毎日毎日缶詰と冷凍食品と乾パンでは、想像しただけで大海に乗り出す気力は萎えるだろうことは容易に想像がつく。

今はどうか知らないが私がスペインでフラフラしていた時代では、かの地の人の昼食は,凡そ2時ごろから始まって3時間から4時間かかるので、食べ終わった頃は既に夕刻である。つまり、午後は仕事ができない(するつもりがない?)ことになる。食べることが生きがいの一つだから当然である。

しかし、これでは10分ほどでサンドイッチの昼食を済ませて仕事にまい進しているイギリス人に「近代工業および金融文明」の下での競争に勝てるわけが無い。いやもともとスペインの人はイギリス人と競争するつもりは無い、といった方が正しいだろう。17世紀、スペイン無敵艦隊がイギリスにボコボコにされて以来、彼らスペイン人はイギリスと張り合うなんて無駄な努力はすっぱりとあきらめたわけだ。

あるいは、競争するには昼飯の時間を切り詰め、しかも午後も頭をすっきりさせておくためにはワインも控えるなどという、あたかも修道僧のごとき生活が必要であると考えた瞬間に、イギリスとの「近代化」競争なんて馬鹿々々しいということになるのだろう。たとえ、イギリスやドイツやアメリカから、お前達は先進諸国中の二流国だとさげすまれても、スペインやイタリアの人たちは気にしないだろう。

俺達の上には青い空が広がり、真紅の葡萄酒が溢れるほどにあり、周りにはきれいなねえちゃん達がわんさといる。あんた達に持っているかね、どうだ、うらやましいだろう、と。(2012/10/03)