5.篠原ブログ:(1083)規律無き幸せ社会

中学生の時、兄に誘われて「長い灰色の線」(The Long Gray Line)(1954年、John Ford監督)という映画を観に行った。ニューヨークのウエストポイント(West Point)にあるアメリカ陸軍士官学校(US Military Academy)の物語であり、題名は、灰色の制服を身にまとって一列に並んだ士官学校生徒の姿から来ている。

ストーリーはもう覚えていないが、映画のラストで展開される生徒の一糸乱れぬ分列行進の美しさは、まさに息を飲むほどの圧巻であり、涙が出るほどのものであった。

兵士の行進が美しいのは、なんと言ってもこのUSAであり、ナチスドイツである。つまり行進はゲルマンに限る、ということになろうか。

この映画の印象が強かったためか、マドリッドで観た軍事パレードでの兵士の行進には驚いた。このパレードは1939年3月に全土を掌握した反乱軍(共和国政府への)の勝利を祝して毎年3月に行われていたものである。

私が居た当時フランコ総統はまだまだ元気であり、その総統の臨席の下、市内で最も広い並木道(Avenida)(名前を失念)を次から次へと各種部隊が行進していく。なかでも凄かったのは、フランコの反乱の母体となったスペイン語で「レヒオン Legion」と呼ばれている外人部隊(植民地駐留軍)である。

カーキ色のシャツ(上着は着ていなかった)の胸のボタンを2-3個外し袖を捲り上げてどたばたばらばらと行進していった。この部隊は特別としても、その他もまずまず似たようなものであり、「一糸乱れぬ行進」なんて言葉はこの国には存在しないと悟らされた。

規律と訳された元の英語は多分「discipline ディシプリン」であろう。辞書でみると元々は軍隊の訓練から出てきているようである。従って、軍隊こそこのディシプリンの権化のようなものであり、規律に乏しい軍隊は戦闘に弱いというのは事実なのだろう。
(2012/10/05)