5.実践、日本人としての誇りとアイデンティティを失うな

日本企業のアメリカ現地法人でエグゼテイブマネージャとして米国事業を牽引してきた友人(*)から聞いた話である。

『アメリカ人は自分たちの物の見方、考え方、生き方は正しいと思い込んでいる。従って自分が理解できない考え方や生き方に出会う、あるいは自分たちの利益を損なうことになれば、猛烈に非難をして攻撃してくる。赴任当初は拙い英語であったが、とにかく解りやすく誤解なく伝えるための英語(ジャパン英語?)つくりで大変苦労した。

しかし、このジャパン英語が部下たちとのコミュニケーソンの「かけ橋」となり、彼等と余談する機会が徐々に増えてきた。仕事を離れてのコーヒータイムで話題になるのが日本文化と日本語の難しさである。

例えば多くの日本人が好む「詫びさび」について聞かれたこともある。“贅沢をする、お金が無くても「心」を豊かにするための代替として生まれた「道」、例えば「茶道」「書道」「武道」などの話をすると、盛り上がり「サムライ魂」まで及ぶこともあった。

また多くの日本人は“人から受けた親切や恩義を、なぜ忘れないのか。たとえ利益にならない人でも困っていたら、なぜ手助けするのか”といった質問を受けることもあった。 例えば「義理と人情」について話すには日本語でも難しい。自分の拙い英語でどのように伝えたのか、どこまで、うまく伝わったのか、その自信はない。しかし、そんな話を重ねていくことで、彼等との関係は良くなっていったのは確かである。

そして〆は、日本人の物つくりに対する拘りが高品質で便利に使える製品を作りだしていることをアピールして、“我々は安心してアメリカ市場を開拓して、ユザーの信頼を得て行こう”「シャシャン」で、〆ることになる。当時の自分には、日本人、アメリカ人という意識はしておらず、ある活動を共に行う集団、すなわち共同体「チーム」を強く意識していた気がする。もちろん、部下達への評価は、絶対に公正でなければならないという、自分への戒めは守れたと思う』

(*)私と友人とのお付き合いは古く、私に営業の「イ、ロ、ハ」を教えてくれた営業のプロフエッショナルである。私は、前に勤めていた会社の社訓が大変気に入っている。それは、「人を愛し、仕事を愛し、国を愛す」の三愛精神である。(矢間伸次)

―体験的陪審裁判必勝法―「実践パテント・トロール対応戦略」 

講師:株式会社小糸製作所 (元)知的財産部長 長谷川修司

日本アイアール社創立35年の記念公講演で、長谷川修司さんに講師をお願いしました。講師の長谷川さん曰く「米国において「パテント・トロール」との特許侵害係争は、有効な反撃手段を持っていない日本企業にとって厄介な問題である。日本企業(日本人)は、「訴訟」で脅かせば最後には必ずらず屈して和解すると思われ、またその通りになるのが現状である」と。

長谷川さんは、そんな同調意識から逆らい「パテント・トロール」相手に「真向から勝負をしてカルフオルニア連邦地裁および「CAFC」で勝訴した体験を持った方である。長谷川さんは、大敵に挑む勇気と精神を持ち合わせており、戦う大儀が明確で、かつ筋が通っている。「名こそ惜しけれ」日本人の美学、を持ち合わせた「侍」であることが外国人弁護士や関係者を感動させ、戦いの戦略、戦術を惜しみなく授け、味方になってくれたことが最大の勝因だと考えている

長谷川さんは、戦いの心得として先ずは、敵方(パテント・トロール)の情報を収集し、分析することの重要性を説いている。つまり、訴訟はインテリジエンス力の戦いで、「情報を制する者が戦いに勝つ」、「戦うには自分を知り、相手を知る」という孫子の兵法を実践していたと思う。長谷川さんが作られた講演の「レジメ」から、戦うために必要な要件が具体的にみてとれる。↓

概要調査&深耕調査を徹底的に実施:相手の組織、所在地、代表者および関係弁護士の履歴、当該パテント・トロールとしての活動実積、保有特許、訴訟の意思決定者、本件以外の訴訟案件、本件訴訟による関係企業への拡がり等。またKey Personとなる主要人物の、経歴、裁判地との関係、言動、考え方、性格、本訴訟の位置付け等。そして、主代理人の実力、履歴、年齢、著作物、言動、考え方、性格、等。

因みに「パテント・トロール」とは、実事業(製品の製造販売)をしていないため請われれば自らを安全地帯に置いて訴訟を武器に相手を一方的に攻撃することにより、高額の和解金(ライセンス料)を獲得している。米国でビジネスする日本企業は、彼等にとって」最高の得意先(カモ)になっていないか、脅せば金になるという存在からも脱皮すべきである(長谷川)。(*)講演会は、大成功で受講者から多くのお礼を頂いた。

◆講演内容は、こちらから