6.いま、知財業界で注目されている「IPランドスケープ」とは?

第4次産業革命の中で、会社の持続的発展を目指すなら「IPランドスケープ」という、言葉遊びではなく、その本質(意義)と目的を「しっかり」と探り出し、自社が必要とする「IPランドスケープ」を具体的に設計することが先ず必要である。

では「IPランドスケープ」とは、いったいなんだろう。その大きな概念は、自社の「経営・事業戦略」の策定に役立たせる調査報告書、即ち「経営開発情報」のことであると思う。それは自社事業に関する内外国のあらゆる関連情報を収集し、「分析・解析・考察等」を加えた「調査レポート」である。

端的に言えば「転換・革命期」における市場動向、企業動向、技術開発動向を俯瞰する「マーケテイング調査」でもある。このレポートの信頼性を高めるためには特許情報を担保にすることが手っ取り早い。なぜなら特許情報には「嘘」がないからだ。「IPランドスケープ」に使われる「調査レポート」の作成は、会社の知的財産部署が担うのが適切だという考え方が出ているのは、このような理由かと思っている。

なぜなら知的財産部は、特許をはじめとする知的財産の「出願業務」と権利の「保全管理」だけをやっている部署ではない。知的財産部の重要な仕事に「特許調査」がある。特許調査の目的は、知的財産の安全を確認して自社事業の優位性を確保することにある。つまり自社と他社の発明技術を比較して自社が自由に開発できる技術領域を確保し差別化技術を生み出すことである。

もちろん特許情報だけでなく、膨大な技術情報の中から必要情報を感知し、それを会社事業に約立たせる、あるいは自社技術に結びつけて新商品開発に役立ちそうな情報を研究開発部門(担当者)へ提供するという重要な仕事をしている部署である。多種・多様の多くの情報と接しながら様々な調査方法のノウハウを持っている人材を抱えている部署なのだ。

経営上層部(事業責任者)は、その役目を知的財産部に期待しているのが現状かと思う。つまり知的財産部は、会社の情報参謀役を認識し、その責任を果たすことで、更に存在価値を高めることが出来る立場にある。そのためには知財マンは、情報の分析スキルを更に鍛え、会社の事業戦略の立案に欠かせない人材になれる感性を鍛えねばならない立場にある。「情報参謀役」に求められる能力は、技術知識だけでなく、あらゆる情報に対する感度(感性)の高さと、グローバル社会の多様さを受け入れる柔軟性である。

この「調査レポート」を読むのは経営上層部であることを強く意識しなければならない。例えばライバル企業A社の事業計画を知り得たとする。このA社の計画が、何処まで進んでいるのか、具体的な情報が欲しいはずだ。会社の持続的発展を絶えず考え続けている経営患部であれば、この調査レポートをキッカケに次の行動を起こすはずだ。次は“こんな情報、あんな情報”が欲しいと際限なく言い出すに違いない。これがグローバル社会で求められている「経営開発情報」の役目でもある。

さて「IPランドスケープ」とは、なんだ、と疑問を投げかけたからには、自分なりの定義を決めておきたい。「IPランドスケープ」とは、「経営開発情報」、「技術開発情報」、「知財開発情報」が、三位一体のサイクルで持続可能な会社を創る為の「知的基盤(インフラ)」である。

1.「経営開発情報」は、経営上層部、事業推進(カンパニー)責任者、研究開発責任者向けのレポートである。それは第4次産業革命で、自社事業はどう変わって行くのか、その変化に対応できるのか、どのような手を打つべきかと言ったことを予知することから始まる。つまり会社の持続的発展と生き残りをかけた極めて重要な調査レポートである。つまり自社事業の将来を俯瞰するマーケテイング調査でもある。

2.「技術開発情報」は、先の経営開発情報をアレコレと引きます回すことで、自社が進むべき新しい技術研究開発の領域を見つけることが可能となる。その領域での技術動向や企業動向、将来の技術トレンドを探索する為の調査レポートである。

3.「知財開発情報」は、知的財産の創出、知的財産の権利化、知的財産の出願計画、 知的財産の保護と活用、そして知財係争等の準備・対応に使うための調査レポートである。「グローバル知財」の世界では、特許、実用新案、意匠、商標、著作権、守秘知財といった、全ての知的財産を包含した知財運営(知財の保護と活用)が「知財戦略」の核となる。知的財産の侵害予防調査などが、これに該当する。