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中国での特許係争事例 武漢晶源・富士化水華陽電業特許権侵害事件

武漢晶源は華陽電業・富士化水と訴訟相手になった経緯

1997年、華陽電業は富士化水と契約を締結し、福建省?州後石発電所の脱硫方法及び関連技術、装置の提供を富士化水に依頼した。しかし、富士化水から納入された方法はマグネシウム脱硫プロセスであり、年間5万トンのマグネシウム鉱石原料が必要となり、遠距離の遼寧省から輸送しなければならない。

http://www.sipo.gov.cn/sipo2008/albd/2008/200805/t20080523_403836.html
中国国家知識産権局HP

この問題を解決するために、華陽電業は、1997年4月3日に武漢晶源と『?州後石発電所排煙脱硫プロジェクト実現可能性調査報告委託契約書』を締結し、排煙脱硫プロセス、特に純海水排煙脱硫方法をメインにした技術実現可能性のコンサルティング業務を依頼した。1997年12月、武漢晶源は実現可能性調査報告書を完成し、国家環境保護部門に実現可能性調査報告を提出するとともに、華陽電業に純海水排煙脱硫技術案を推薦した。

華陽電業は、1997年4月26日富士化水と契約を締結し、1998年12月23日、華陽電業は排煙脱硫設備の製造及び取り付けを始めた時には、下請けの会社に対して、富士化水が有する純海水排煙脱硫方法に基づき、製造と取り付けをすることを命じた。武漢晶源による?州後石発電所の排煙脱硫プロジェクトへの参入を断った。

2000年前後は、中国火力発電所の排煙脱硫市場のスタート時期である。?州後石発電所の排煙脱硫プロセスが武漢晶源の業績と認められない限り、武漢晶源は他の発電所のプロジエクトに入札できなくなり、莫大な損失になる。

2001年9月、武漢晶源は、富士化水及び華陽電業の行為は自社の所有する特許権を無断で実施することを理由として、福建省高級人民法院に特許権侵害訴訟を提起した。

訴訟中富士化水の対応

富士化水の抗弁は以下の二点にある。

1.武漢晶源の特許が公知技術であり、無効特許であることを主張し、自分は権利侵害とならない旨を主張した。2004年12月13日、富士化水は、特許権ZL95119389.9の無効審判請求を中国国家知識産権局専利複審委員会に提出した。2006年6月に、複審委員会から特許権維持の審決が下され、2006年12月に、北京市第一中級人民法院から複審委員会の審決を支持する旨の判決が下され、2007年8月に、北京市高級人民法院から北京市第一中級人民法院の判決を支持し、上告を棄却する最終判決が下された。武漢晶源の特許権が有効である前提で侵害訴訟が審理されることになった。

福建省高級人民法院は、富士化水が証拠として提出した文献は部分的な技術要素に過ぎず、完全な技術法案ではなく、特許権ZL95119389.9の独立項の全ての技術的特徴を開示するものではないため、公知技術による抗弁の主張は成り立たないと認定した。

2.富士化水は40年前から既に排煙脱硫装置を開発、製造し始め、今までは100機以 上製造したことがある。華陽電業に提供した脱硫装置と技術は、1995年に台湾麦寮工場で受注生産した排煙脱硫装置とは全体的に同一であるため、争点となる特許とは関係がないことを主張した。

福建省高級人民法院は、富士化水が台湾麦寮工場で受注生産した排煙脱硫装置の技術を証拠として提出しなく、主張を認めないと認定した。補足として、富士化水の台湾での実施行為は中国の法律管轄領域外であるため、中国特許法第22条第2項の公知公用に関する規定(国内外の出版物上での公開発表、国内で公開使用)に基づき、当該特許権の新規性を否定するものとして使用することができないと認定した。

富士化水の製品が武漢晶源の特許権の保護範囲への属否について、福建省高級人民法院は、2003年11月14日に中国科学技術法学会華科知識産権鑑定中心に鑑定を依頼した。鑑定の結果は富士化水の製品による脱硫方法は特許権の保護範囲内に属することと認定した。

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