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IPMA >> 特許係争に巻き込まれたら >> 警告書の対応の仕方

特許紛争に巻き込まれたら 第一章 特許紛争発生時の適切な対応とその進め方

警告書への対応

1)警告書の種類

侵害警告を受けたからといって、慌てることなく警告書を十分調査、分析することである。そのために、ここでは「警告書の種類」、「警告書の意味」、「権利者の検討」について明らかにしたい。警告書は、その目的、内容、相手の態度等から、「柔軟な警告書」、「強硬な警告書」、そして「中間的な警告書」の三種類に区分することができる。

警告書を受領したときは、その文面の強弱や内容に関わらず、権利者の目的は、製品の差止や金銭の取得にあるという本質を忘れないことである。

1)柔軟な警告書:
柔軟な警告書の場合は、権利者はライセンスを通じた特許使用許諾を求めている場合が多いわけである。従って、警告を送付された侵害の疑いを持たれた企業が対抗措置として「特許無効訴訟」を提起されるリスクを避けたい思惑がある。このような場合は、侵害の可能性が必ずしも高くないか、あるいは侵害が生じていてもそれほど重要な特許ではないという状況が考えられる。

2)強硬な警告書:
強硬な警告書の場合は、訴訟につながる可能性が高いと考えるべきである。権利者は侵害の疑いを持たれた企業に対して、侵害の停止または予防と言った差止請求、損害賠償金の支払のいずれか、もしくはその両者を要求してくる訳である。一般的には、この場合権利者は、「特許無効訴訟」を提起されることを許容した上で強い姿勢をとってくる。

3)中間的な警告書:
中間的な警告書の場合は、柔軟な警告書と強硬な警告書の単純な中間的なという意味ではなく、様々な意味を込めてのものである。例えば、文面では「侵害の停止または予防を求める」としつつも、訴訟を提起するかどうかについては触れられていないというような場合である。

2)警告書の意味

警告書を送付された侵害の疑いを持たれた企業では、その警告書をどのように取扱い、応答すべきかを考えなければならない。先ず企業は、警告書を実務上の問題として認識することが重要であり、警告書による事業上のビジネスリスクとして捉え、そのリスクを最小限に防止する戦略を構築し、柔軟に実行しなければならない。警告書はあくまでビジネスの一要素であるということを覚えておくべきである。こうしたビジネスリスクの算定を前提に、警告書の意味を把握しなければならない。つまり、事業上のビジネスリスクが戦略商品に関わるものであれば、企業経営上重大な結果をもたらすが如きである。

1)内容の詳細:
警告書の内容の詳細については、問題となる特許とそれを使った製品の特定、その警告書自体の法的な有効性等の検討が必要になる。法的事項としては、公開特許での警告であれば、その特許発明の内容が特定されるような情報が開示されていること、実用新案権での警告であれば、「実用新案技術評価書」の提示等である。

2)要求の内容:
警告書の要求内容については、特許権者の要求が「過去の損害賠償」、「将来のロイヤリティー」、「侵害の早期差止」、「訴訟のための手続要件の充足度」等である。権利者が何を求めているかは、その後の対応時に重要な要素になるため十分な把握が必要である。

3)要求と意図:
警告書の要求と意図については、警告書の文面に記載されていない特許権者の意図を読み取る必要がある。つまり、「ライセンス交渉を開始したいのか」、「損害賠償を要求したいのか」、「競合関係者として営業活動を停止させたいのか」、「当方が所有する特許権等とのクロスライセンスに関心があるのか」と言った要素である。前項の「要求の内容」と合わせて、その後の対応時に重要な要素となり大きな意味を持ってくる。

4)他社の動向:
他社の動向については、その特許に関して「他社との間で既にライセンス契約が存在していないか或いは係争が起きていたりしないか」、「ロイヤリティーの料率や特許権利者の取組みなどに関する情報がないか」、「早期に協調することでどの程度有利な条件を特許権者から引き出すことができるか」と言った戦略の効果を検討することになる。

3)権利者の検討

特許権の権利を主張してきたのは誰なのかと言う観点から警告書を検討していくことになる。具体的には特許権者のプロフィールを分析・検討することになる。警告書を送付してくる特許権者は、企業、個人、教育機関等実に多様である。最近では特許ライセンスを専業とする企業も出てきた。こうした企業が警告書を送付してきた場合、顧客からの報酬が最大の目的であり、「製品差止」には余り興味を示さない。一方、競合他社の場合は、こちらに市場でダメージを与えることを第一の目的として考えているものと予測できる。

1)事業の規模:
特許権者の企業規模がどのようなものであるか、競合他社の場合、競合製品の規模はどのようになっているか知る必要がある。

2)弁護士、弁理士の情報:
警告書に表示される権利者が雇う弁護士、弁理士の情報を収集して雇用その形態や性格を調査する。社内弁護士(弁理士)であるか、わかれ ば成功報酬制、時間報酬制のどちらか、これ等の違いによって係争に対する弁護士(弁理士)自身のスタンスが大きく異なってくる。

3)権利行使履歴:
権利者の過去の権利行使についての履歴を調査・分析する必要がある。権利者がこれまでにこのような係争にどのような姿勢で臨んできたのかを知ることは大変重要なことである。

4)最終目標の認識:
特許権者の最終目標を認識しておかなければならない。ここでは、「ロイヤリティーの支払いを一時払い(lump sum)と売上ベースの支払い(running royalty late)のどちらが求められているのか」、差止めの要求は提訴か、行政訴訟への申請か」といった市場シェアに関する要因、特許権者の財政的な位置付け、そして自社との関連(顧客、供給者、共同事業者)などを合わせて分析・検討することが必要である。

対応の仕方

ここまでのところは、関係する事業部(特許担当者、技術関連管理者)、特許部門の特許担当者が共同で一体となって、予備的に進めればよい。

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