特許紛争に巻き込まれたら　第一章　特許紛争発生時の適切な対応とその進め方

支払いを最小限に抑止

自社の状況や権利者を巡る環境に応じて、複数の選択肢を考えることが必要になってくる。

1）金銭的な支払い

一時払い（ｌｕｍｐ　ｓｕｍ）は、ロイヤリティー・レートを有利に設定できる場合があり、また、早期に支払うことで営業活動に関わる制約を取り除くことができる場合に有効な方法である。一方、販売ロリヤリティー（ｒｕｎｎｉｎｇ　ｒｏｙａｌｔｙ）は、将来の販売が予測できない場合や販売量が現状維持または減少する場合に有効であるばかりか、権利者が主張する特許権を回避した設計変更が将来可能な場合も有効である。また、財務上の理由から複数年度に分割した支出が必要な場合にも有効な選択肢である。これ等の条件は固定的に考えることなく、その組合せ、比率等を考慮した選択肢を考慮することも重要である。

2）金銭的な支払いによらない

特許権者が企業である場合には、例えばクロスサイエンスの提案もできる。特許による技術武装状況の解析を必要とするが、お互いの技術力が拮抗する場合には、クロスライセンスを通して自社および権利者の特許権が必要なときに自由に使用しうる状況を保持し、開発効率向上に寄与できるのみならず金銭の受け渡しなく解決できるメリットを有している。